秋の夜長を~岐阜ふくまちやの漆教室
去る9月3日、来年春に発行予定の「改修の本」のために、岐阜市川原町の「ふくまちや」を、畑拓さんに撮影して頂きましたが、先ごろ、その写真データが届きました。
どの写真もググっとくるものばかりで、編集の真鍋さんは、どのように選ばれるのかな?と想像してしまいます。
はや、10月も下旬になり、2020年の残りも先が見えてくるころ、日の出、日の入りも遅くなり、夕方6時を過ぎると、暗くなるこの時期、逆に時間がゆったり過ぎるような気もします。
そんな秋の夜長にふさわしい、夜景の写真にそそられて、暗くなりかけたころ、この「ふくまちや」に訪れるといった趣向で、写真をご紹介していきたいと思います。
岐阜城近くの古い町並み川原町の通りの角に小さな町家があります。
間口4.2m奥行27mの敷地に、間口3.64m(2間)、奥行22.7m(およそ12間半)建物があります。築100年ほどの既存建物を8年前に改修しています。
正面は南に向いていて、写真右手に見える通りは、「ふくまちや」の東になります。
シンプルでかわいい門をくぐり、少し前庭を歩いて、表玄関が。
東の道路には、大きな窓が開いていて、中の様子がうかがえます。
ここには、久津輪円さんの漆教室があるのです。
道路境界線のギリギリに、壁、窓があるので、額に入った絵のようです。
ここは吹き抜けの空間になっています。
1階の窓の格子網戸を閉めるとこんな表情に。
さらに、1階と吹き抜け部の、窓の障子を閉めれば、このような優しい表情に。
さて、明るくなってから、改めて、漆教室を訪問します。
表玄関には、提灯照明があります。久津輪円さんの、漆教室の生徒さんが岐阜提灯の会社の社長さんで、オリジナルデザインのランプシェードを改修工事の完成時のタイミングで準備してくださいました。
玄関から見る漆教室、ぴかぴかに光る漆の床板が、まず目に映ります。
これも、円さんが、生徒さんのお手伝いも得て、自ら塗られたものなのです。
改修前は、平屋の住宅だったのですが、天井を外せば、このような大きな空間に。
新しい構造材と、古材が組み合って、漆教室の独特な空間をつくっています。
薪ストーブの存在も一役買っていますね。
撮影中、漆教室を再現。生徒は、Msスタッフの中尾アキチカ君。
窓の外から話しかけているのは、私です。
期せずして、町とのかかわり方が、感じられるシーンになったのではないでしょうか。
格子を閉めた漆教室。
吹き抜けにつながる2階空間が気になります。
2階は、住まい空間です。内法高さの低い小屋梁に、来訪者はおでこをぶつけるのですが、ふくまちやの住まい手である久津輪ファミリーは、皆さん反射的にかがみ姿勢で歩行のため、事なきを得ているようです。
その2階から見下ろした漆教室。吹き抜けの窓が開いて、住まいも町につながる感覚です。
改修が完成してから8年が経過した住まい。古い建物を改修して、さらに時間を重ねて魅力が増しています。
(三澤文子)
T.K邸 清祓式
夜も涼しいというより寒くなってきて、だんだんと秋めいてきていますね。
ススキが綺麗な岩湧山にでも登山に行こうかなと目論んでいる今日この頃です。
さて今回は、先日に大阪府吹田市にある改修物件の清祓式を大安の日に行ったので、その様子をご紹介いたします。
最近は清祓式を執り行わない現場も増えているそうですが、Msでは改修物件を行う際、基本的に清祓式を行っています。
神主さんは、千里天神さんからきていただきました。
実は神主さんは清祓式の少し前にぎっくり腰になったそうで、鍼治療に数回通って回復したとのことです。
無事に清祓式当日までに回復でき、ひと安心。私もぎっくりに腰なった際は、鍼治療やってみます。
...少し話が脱線しましたが、神主さんが現場に到着したら、まず祭壇の準備に取り掛かります。
道具などを運んで、設営完了です。
祭壇の向きは、神様が南へ向くように設置をします。
神主さんが、祝詞を奏上し、
その後は、清祓いの儀を行います。
各部屋に切麻(きりぬさ)をまいて、
祓い清めていきます。
切麻とはなんぞや、ということですが、
神主さんが持っているものが切麻で、麻や紙を細かく切り、それにお米と塩を混ぜたものです。
これを各部屋にまいていき、悪いモノが敷地に入ってこないように、土地を清めていきます。
そして、玉串奉奠(たまぐしほうてん)です。
住まい手の方にも二拝二拍手一拝の作法で行ってもらっています。
最後に参加者で神酒を飲み、閉式です。
※車の運転がある方は口をつける所作のみ
工事の始まる前の区切りとしても、清祓式を行うと気が引き締まる思いです。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
スタッフ宮本
軸組模型の作り方
Ms日記をご覧の皆様こんにちは
Msスタッフ中尾です。
今週のMs日記は、軸組模型の作り方を紹介します。
軸組模型は梁のかかり方や柱のピッチ,材の長さを一目で確認できる優れものです。
木拾いの際に製材所との打ち合わせなどに用いられます。
今回軸組模型を作る機会を頂いたので,軸組模型が仕上がっていく過程を写真で解説できたらと思います。
■準備するもの・スチノリ(接着剤)
・スチレンボード(3mm・5mm)
・カッターナイフ(できれば30度カッターナイフが良い)
・カッターマット
・三角スケール
・直線定規(30cm・100cm)
・さしがね(90度を測る定規)
・スプレーのり
・ドラフティングテープ(部材の仮止めをする)
1・必要部材のカット
柱、梁、土台、大引き、垂木など、最初に部材を切っておき、後は組み立てるだけの状態にします。
上の写真は5mm角に加工した部材です。
これを柱と土台に使用します。
一気に作ることで時間の短縮になり効率的です。
2・基礎を作る
基礎伏図面上に基礎を立てていきます。図面と照らし合わせながら基礎の高さ関係、通り芯を確認します。
基礎が少し歪むだけでその上に乗る部材は大きくズレてきます。
細心の注意を払いながら基礎を作ります。
基礎が完成しました。
3・土台を組む基礎の上に土台を乗せます。
ここで柱の立つ位置をシャーペンなどで印をつけておくのがおすすめです。
大工的な用語でいうと墨出しでしょうか?
土台が完成。つまり、1階の床が完成しました。
4・通し柱を建てる
通し柱とは、1階から2階まで通して立つ柱のことです。
スチノリは固まるのに時間がかかり、完璧に固まるまでに通し柱が傾く可能性があります。
ドラフティングテープで90度の接着の補助をします。
通し柱が全て入りました。
5・組み立てていく
最初に部材のカットを終えているので、あとは間柱と梁を組み立てていきます。
90度を常に意識しながら・・・
2階床が完成しました。
あと少し・・・
棟木、登り梁、垂木を組み完成です。
製作期間は5日間。
入社当初に比べると、作業効率の良さを考えるようになり、模型精度も良くなりました。
効率の良さと精度は比例関係にありそうです。
意匠模型に比べると無骨な軸組模型ですが、いざ組み上げてみると、その構造美に魅せられます。
1/30模型でも構造材の力強さが伝わってきます。
さて、こちらの物件もいよいよ着工を控えています。
真壁造りのカッコいい家ができそうで、とても楽しみです。
Msスタッフ中尾
植物から元気をもらう
ZOOMでの打ち合わせやセミナー受講などが多くなったことから、三澤康彦さんの席をZOOM部屋にして、私もスタッフも利用しています。ここならばマスクなしで大丈夫です。
本棚も整えて、奥にあるキッチンを行き来する人影を隠すために、夏草を活けて目隠しにしていましたが、季節が秋に変わったタイミングで観葉植物を置くことにしました。
葉の色も鮮やかな カラディウムです。この植物のセレクトをお願いしたのは、春音さん。(代表:八田明美さん)もともとは 葉ぶりの個性的な モンステラデリシオサ が春音さんのおすすめでした。
これが、モンステラデリシオサです。ただ、カメラ映りは 色が明るいほうが、良く感じましたので、第2候補のカラディウムに交換しています。
ZOOM部屋を使用しないときは、エントランスから入ってすぐ、お出迎えしてくれるここが、カラディウムの定位置になります。
南向きでガラスが大きく、サンルームのようなエントランス空間です。
中央、カラディウムの、写真奥にあるスパティフィラム。実はその奥にもう一つあった、同じスパティフィラムが、春音さんのところに、ただいま入院中なのです。
そこで、春音さんへ、退院のお迎えに行ってきました。
にこやかにお迎えくださったのが 春音の八田さん。Msのすぐ近く、吹田市山田にお店があります。
入院中のスパティフィラムは、八田さんが株分けして、鉢二つにしてくれています。元気が無かったのが、入院前より葉っぱの緑も濃くなり、元気が出てきたようです。
実はこのスパティフィラムは、千里三澤自邸の新築祝いで頂いたもの。なんと、35年が過ぎています。
お茶も頂きながら、花や観葉植物のことを、色々教えていただきました。
私も仏前にお供えするのに、週に一度、2つの花器に花を活けているので、生け花が趣味になりそうです。
それに、アウトドアリビング、インナーバルコニー。ガーデンリビングなどなど、ただいま進行中のお住まいには、春音さんのお店のような、たくさんの植物に囲まれた、素敵な空間が出来上がりそうなのです。
春音さんに行ったついでに、この植物も購入いたしました。
アンスリュームポリスチスタム です。涼しげな葉ぶりが気に入りました。
秋の日差しが だんだんと、部屋の奥まで入ってきます。薪ストーブの横に、退院した スパティフィラムが見えます。
そして、今の私のデスクは、エントランス前。まるで受付のポジションです。
ここから見える庭の見え方が、一番いいことに、昨年夏ころ気が付いたからです。
そして、向かって左端、もう一つのスパティフィラムが見えますね。
そういえば、25年前にも、このエントランス空間にある植物の話を書きました。
連載していた朝日新聞の家庭欄のコラムです。
よく見ると、当時10歳の娘のお尻の先に、若き日のスパティフィラムが見えます。
この明るいエントランスは、長生きできる空間なのか? 是非、あやかりたいものです。
(三澤文子)
丁寧な暮らし方をされているお住まいを訪問しました。
コロナの脅威が少し弱まるころ、メンテナンスの相談がありました。
Ms建築設計事務所では、1年、5年、10年とメンテナンスを行います。
住まい手さんのお悩みを聞くだけではなく、
住み心地についてもお聞きすることができるので、とても貴重な機会です。
今回は2010年に、故・三澤康彦さんが設計し、竣工した芦屋のお住まいを訪れました。
ちょうど10年メンテナンスになります。
住まい手の奥様はピアノの先生をしてらっしゃいます。
1階の玄関入ってすぐは、ピアノのレッスン室になっていますが、
入って正面にはとても印象的な木製の壁が、と思いきや、
なんと自宅とレッスン室を仕切る、大きな引戸でした。
生徒さんたちも最初びっくりされたそうです。まさか扉とは!と思うほどおおきな引戸なのです。
レッスン室の壁が同じ形状なので、ひとつづきの壁と思ってしまいます。
印象的な空間に驚いたのはもちろんですが、年月を経ても美しさが保たれている様子に、
住まい手さんの丁寧な暮らしが伺えます。
メンテナンスしてほしい場所などを、実際にお家を巡りながらお話を伺います。
外回りを巡っていると、素敵な傘立てを発見!
住まい手さんが、この家に合う傘立てを色々探して、
市販では見つからす、ご自分でデザインされ、特注で製作されたものだそうです。
石の傘立てはシンプルですが、お家の雰囲気にとても良く合っていました。
ピアノ教室の生徒さんにも好評だそうです。
他にも、住まい手さんの素敵な工夫を発見しました。
キッチンに行くと、シンク下に、焼きを入れた木の箱を、ゴミ箱と、レジ袋入れに使用されていました。
使いやすい寸法をじっくり検討されて、ご自分でデザインしたそうです。
木の風合いと、シンプルなデザインが、造作のキッチンにとてもあっています。
あまり人目につく場所ではないところですが、素敵な収納をされていて、勉強になりました。
お家に似合うものを探していると話す様子は、とても楽しそうで、住まいへの愛情を強く感じます。
お悩みだけでなく、住み心地についてもお聞きすることができました。
生活しているうえで、良かったことは、リビング、キッチンの床の大理石だったそうです。
最初はどうかな?と思ったそうですが、汚れてもすぐふけるのでメンテナンスもしやすいとか。
夏はひんやりして、気持ち良いそうです。実際の体験を聞けるのは、とても貴重なことです。
お庭も素敵でした。ご家族とともに成長した木々は、お家をやさしく彩っています。
今回の訪問で、住まい手さんが愛情を込めてお家を育てているのが伝わってきました。
そのお手伝いができるメンテナンスの重要性を感じた、1日でした。
Msスタッフ濱田